恋を知らない人魚姫。


「うっ、えっ……」

涙の勢いは増す一方で。
しゃくりあげて、上手く呼吸が出来なくて、苦しい。

いっそこのまま、死んでしまえばいいのに。
涙の海に溺れて、死んでしまえばいいのに。

そう思うのに、あたしの体は意思とは別に、必死に酸素を求めてる。

自分が死にたいのか、生きたいのかさえ、もう分からない。

ただ、苦しくて苦しくて、心臓が押しつぶされてしまいそうで……。


「……っ、助けて」


思わず上げてしまった声。

“いけない”と思った時には、もう遅かった。


ストン……と、少し重いものが床に落ちた、そんな音がして。

不意に顔を上げようとした瞬間、暗くなった目の前。

あたしの体をすっぽりと包み込む温もりと、ふわりと香る優しい匂いに、さっきの音は鞄を降ろした音だと気付く。

あたしは櫻井くんに、抱きしめられていた。