恋を知らない人魚姫。


「気持ち悪い」と言った後、愛海は早足で遠ざかっていきながら、誰かからの電話を取っていた。

「悔しいけど、本当だった」

唯一聞こえた、愛海の声。

その一言で、全て悟ってしまった。

今朝、愛海のクラスメートに睨まれた理由も、少し変だった愛海の様子も、“信じてる”の言葉の意味も……。

友達から疑わしいことを聞かされながら、愛海はきっと最後の最後まで、あたしを信じようとしてくれていたんだ。

それなのに、最後の最後に裏切ってしまったのはあたし。


あの時……櫻井くんが顔近付けてきた、あの瞬間。

目を閉じて、受け入れてしまったのは、他でもないあたし自身。

もしあの時、彼の頬を思いっきり叩きでもしていたら、状況は変わっていたのかもしれない。


本当に別れるつもりだったけど、今となってはそんなの言い訳にすぎなくて。

あたしが櫻井くんを受け入れてしまった事実は、どうやったって消えない。

だから……悪いのはあたし。


女の子なんか好きになっちゃって。
そのために最低なことをして。
終いには、大切な人を傷つけて失って。

どうしてあたしは、こんなダメ人間なんだろう。

考えれば考えるほど、自分が嫌で涙が溢れる。