恋を知らない人魚姫。




ペタン、ペタン……。

だらしないくらいに、ゆっくりな足音。
まるで足に鉄球でも付けられているみたいに、重い。

それでも、ちゃんと歩けているんだから、まだまともな方か。

いや、やっぱり全然まともではないかもしれない。

だって、あたしの体が辿り着いた先。
目の前には、大きな扉。

あたしはその扉を、何の躊躇いもなく開く。


愛海とあんなことになって。

あたしの足が向かった場所は……図書室だった。


荷物があるから、仕方なく。

そんな無意味な言い訳を、鈍い思考回路で組み立てる。

……言い訳だって、分かってる。

荷物なんか置いてなくったって、あたしはきっとここへ来た。


「うわっ!何て顔してんの!?」

図書室独特の空気と共に、あたしを迎えた声。

正面には自分の鞄を肩に下げ、反対の手にあたしの鞄を持った櫻井くん。

あたしがここに来た理由がふたつ一緒。