恋を知らない人魚姫。


あたしが彼と付き合ったのは、愛海をバカにしたかったからとかじゃない。

あたしはただ……

「愛海のことが……好きだから。だから、櫻井くんと付き合ってたの」

「……え」

意を決して言った、あたしの気持ち。

ほんの数十秒前まで、知られるのが怖かった。

だけど、『バカにしたかったの?』と聞かれて、その気持ちは逆転した。


「何で……あたしを好きなのが、たっくんと付き合うことに繋がるの?」

戸惑いの色を浮かべながらも、真っ直ぐあたしを見て言う愛海。

「あたしだって、海憂のこと大好きだったよ?でもっ……」

「だから違うのっ!!」

愛海が口にした、“好き”。

それはあたしのとは違って。やっぱり分かってもらえてなくて、思わず声を張り上げた。


いつも笑っていたから、愛海の前で怒鳴ったのは、初めてかもしれない。

愛海はとても驚いた様子で、零れていた涙も不意に止まる。

今、考えていることを口にすれば、きっともう元には戻れない。

“友達”には戻れない。

それでも……。