ギッ……と重たい音を立て、扉をそっと開く。

ふわりと鼻をくすぐる独特な匂い。

校内で一番落ち着くと言っても過言ではなかったそこは、あの日から一番落ち着かない場所になった。


『俺さ、月城さんに興味あるんだ。だから……俺と付き合ってよ』

今でも鮮明に思い出せる、彼の言葉。

櫻井くんがあたしの目の前に現れた、あの日。

全てが狂ってしまった、あの日。


当時あたしが腰掛けていた場所に目を向けると、そこには誰の姿もない。

毎回毎回、一体どうやって言いくるめてるんだろう。

……いや、委員会の当番なんて面倒な仕事、代わってあげると言われれば代わってしまうか。
それが先輩からの言葉であれば、尚更。


そのまま奥へ奥へと、ゆっくり足を進めていく。

同時に思い出していく、今までのこと。