「それじゃあ……」

少し素っ気なく背中を向けようとした愛海を、

「待って」

あたしは咄嗟に呼び止めた。

「明日、クレープ奢るから」

食べ物で釣ろうとするなって話かもしれない。

でも、振り返った愛海はキョトンとした後、

「駅前の、いちごとアイスが入ったやつね!」

いつもの明るい笑顔で応えてくれた。


本当は、クレープひとつで許されることじゃない。

だけど、ごめんね……。

明日からはまた、その笑顔に真っ直ぐ向き合えるようにするから。


今日一緒に帰れないのは、

最後の嘘。
最後の裏切り。