恋を知らない人魚姫。


「海憂」

聞こえることのないと思っていた声が聞こえて。

あたしはビクッと肩を震わせ、振り返る。

すると、扉を手で開け、立ち止まった愛海がそこにいて、

「あたし、海憂のこと信じてるよ」

と、微笑んだーー。


「……」

返事する余裕もなく、あたしを残して、パタンと閉まる扉。

そんな余裕、あってもきっと困っただろうけど、

信じてる……なんて意味深な言葉、一方的に告げられて、消えられても困る。


「どういう意味……?」

離れれば少しは楽になれると思ったのに、全然楽にならない。

むしろ、最後に残された言葉が、あたしをもっと追い込む結果になった。


箸を持つ手が震える。
もう一口も食べれそうにない。

それが、どんな意味で言われた言葉だとしても、

「よりによって信じてるとか、言わないでよ……」

鋭く心に突き刺さる、無邪気な笑顔。

さっきまで疑われないように気をつけていたくせに、今は疑ってほしい。