恋を知らない人魚姫。


「ちがっ……違うの!」

掴みかかるくらいの勢いで、愛海が否定してきたから。


一瞬で縮まった距離。

目の前にある、真剣にあたしを見つめる顔に驚いていると、

「あっ、ごめ……」

愛海は気まずそうに、体と目をあたしから離して。

「でも、本当にそういうのじゃないの」

苦しそうな顔をして、呟いた。


そういうのじゃないなら、どうしてそんなに元気がないの?

どうして少しよそよそしいの?

本当は何かあったんじゃないの?


聞きたいのに聞けない……のは、

顔を逸らした愛海が、泣きそうな顔をしているように見えるから。

まるで繊細なガラス細工。
下手に触れたら簡単に、カシャンと音を立てて壊れてしまうような、そんな気がして……。


何と声をかけたらいいのか分からず、困惑したまま口を開けない。

それを知ってか知らずか、愛海の顔がこっちに動く。

そして、再び交わった視線。

愛海はそのガラスみたいな表情のまま、

「あたしは海憂の親友だよね……?」

と、聞いてきた。