恋を知らない人魚姫。


「あたしは全然大丈夫。それより、早く行こう?」

「うん」

頷いて、急かしたままに足を進める愛海。

「海憂はテスト出来た?」

「う……ん、まぁ多分普通」

「いいなぁー……。あたし、結構出来てないかもしれない」

どこかで聞いたような会話を、繰り返しながら歩く。

愛海は普通に喋っているつもりかもしれないけど、その様子はやっぱり少しおかしい気がした。

何だか元気のないように感じるのは、テストが出来なかったせいか。

それとも……。


考えてみて、フッと浮かんだ出来事。

それは、今朝の“しーちゃん”。

突然きつく睨まれてしまったあたし。

あれは……。

「そういえば……朝の何だったの?」

「え?」

「ほら、話しかけてきた友達。何かちょっと急用っぽかったから」

「あ、あぁ……」

愛海は少し歯切れの悪い相づちを打って、

「別に大したことじゃなかったよ」

何かを隠すみたいに笑った。