恋を知らない人魚姫。


「きゃっ……!」

小さく響いた悲鳴と、お腹に軽い痛み。

教室に入ろうとした誰かとぶつかって、相手の顔を確認すると、

「愛海!」

それは正に今、探しに行こうとしていた人だった。

愛海はお弁当箱を抱えていて、どうやらこれが当たったらしい。

「ごめんっ!大丈夫?」

ぶつかってしまった所に手を伸ばしながら、心配そうに声をかけてくれる愛海。

だけど、あたしが手にしたお弁当の包みを見て、

「どこか行くの……?」

と、問いかけた。

「どこか……って遅いから、教室まで行こうかと」

あれ?約束してなかったっけ?

思いがけない質問に、不安になりつつ答える。

すると、やっぱりあたしは間違えてなかったみたい。

愛海はハッとした様子で、

「あっ、そうだよね。ごめんっ、遅くなっちゃって本当にごめんね」

苦笑いを浮かべて、謝った。

何だろう……少し、様子がおかしい気がする。