恋を知らない人魚姫。


「愛っ!」

あたし達の間に、割って入ってきた声。

「あ、しーちゃん」

少し驚いた様子で、愛海が声を上げる。

名前までは知らないけど、見覚えのあるその女の子は、きっと愛海のクラスの友達。

ショートカットが涼しげなその子は、「おはよ」と挨拶しようとする愛海の手を取って、

「ちょっと話があるんだけど」

と、眉間にシワを寄せ言った。

「話……?」

ただならぬその様子に、笑っていた愛海の表情も変わる。

「うん。とにかくちょっとこっち来て」

「えっ、あっ、しーちゃん?」

手を引かれ、戸惑う愛海。

“しーちゃん”と呼んだその子と、あたしを交互に見て、

「海憂ごめん!お昼休みにそっち行くね!」

片手でごめんのポーズをして、申し訳なさそうに謝った。