9月。文字にしてみれば秋らしいけど、まだまだ夏。
朝だというのに、既に高くまで昇った太陽が、ジリジリと肌を焼くように暑い。
休み期間、空調の効いた室内にばかりいたせいか、一気に怠くなる体。
ただでさえ浮かない気持ちが、高すぎる気温のせいでもっと沈む。
それでも、だからと言って休んだり出来るはずもなくて、あたしは仕方なく重い足を進めていた。
学校に行きたくない……なんて思うのは、いつぶりだろう。
教室の居心地は決して良いものではないけれど、そんなのはもう慣れっこで、何とも思わなくて。
クラスで孤立してしまっていても、あたしは学校が嫌いじゃなかった。
むしろ、好きだった、嬉しかった。
だって……。
「あ、海憂ー!」
前方から突然、大声で呼ばれた名前。
俯き気味だった顔を上げると、嬉しそうにぶんぶんと、大きく手を振る女の子が目に入った。
太陽みたいにキラキラ眩しい、その女の子は愛海。
こうして愛海に会えるから、あたしは学校が嫌いじゃなかった。
……それなのに。



