反動で顔が沈む。
彼の顔が見えなくなる。
あたしなら余裕……って、最後のは少しからかったような言葉。
だけどーー。
スッと軽くなる頭。
離れた感触に顔を上げると、櫻井くんはあたしに背を向けて、歩き出していた。
“ちゃんと考えてんじゃん”
“もうちょっとゆっくり考えてみたらいいんじゃない?”
今さっき言われたばかりの言葉が、頭の中でぐるぐる回ってる。
心の奥底の悩みを、彼に喋ってしまったあたしもどうかしてるけど。
でも、
「何で……」
あたしを慰めるような、励ますようなことを……言ったりするの?
聞きたいのに聞けない。
遠ざかっていく背中をただ見つめる。
聞いたって、どうせ納得のいく答えなんて貰えない。それもあるけど……。
ゆっくりと止まる彼の足。
そのつま先がこっちに向こうとして……あたしは少し慌てて足を動かした。
目を合わせないように、視線を逸らして。
“優しい”と、少しでも認めてしまえば、あたしの中の何かが壊れてしまいそうで……怖かった。



