恋を知らない人魚姫。


どうしてこんなに……優しくしたりするの。

「っ……」

リモコンの画面へと、視線を落とした櫻井くんを見ながら、下唇を噛んだ。


大嫌いな人なのに、

変に優しくしたりするから、時々分からなくなってしまう。


愛海と付き合ってくれればいいのに。

そしたら愛海は幸せになれて、
あたしも諦めを知ることが出来るのに、

どうしてあたしの傍から……離れてくれないの。


考えていたら、胸の奥が苦しくなった。

愛海と一緒にいる時とは、また違う気持ち。


ピピピピ……と、曲が転送された音が聞こえて。

あたしは目の前に置かれたリモコンに、そっと手を伸ばした。

櫻井くんがあたしを見ている気がするけど、わざと知らないふりして、目を合わせなかった。


もし微笑んでいたりしたら……

自分の気持ちさえ、分からなくなってしまいそうな気がしたから。