恋を知らない人魚姫。


「……え?」

“鳩が豆鉄砲を喰らった顔”とはよく言うけれど、きっと今の彼の顔がそう。

目をまん丸にして、少し間抜けに見える表情に、笑ってしまいそうになる。

でも、あくまで真面目な提案。
笑って、誤魔化されてしまうわけにはいかない。

受け入れてくれるわけないと思いながら、彼の返事をじっと待っていると、

「月城さんって、ドSだよね」

クククと笑いを噛み殺しながら、櫻井くんは言った。

「ドSって……!」

その言葉、そっくりそのままあなたに返したい!

反射的に言い返しそうになったあたしだけど、彼の行動が目に映って、口を閉じた。

「しょうがないな……」

声と一緒に、再び響く電子音。

櫻井くんくんはまたリモコンを手にして、歌う曲を探し始めた。


……驚いた。

まさかこんなにあっさりと受け入れてくれるなんて、思ってなくて。
ドSと言われて、カッとなった気持ちも消える。