恋を知らない人魚姫。


ニヤッと笑った顔といい、やっぱりあの時のことをからかっているんだろうか。

でも、あまり聴いたことがないのか、時々外れる音。

からかう為だけに、得意でもない歌をわざわざ自分で歌ったりする……?


考えているうちに、曲はサビまで来ていて。

聞き慣れた声。でも、聞き慣れない歌声に静かに耳を傾けていると、

1番が終わった所で、曲は消えるように止められた。


「さすがに2番は歌える自信ないわ」

そう苦笑しながら、櫻井くんはマイクを置く。

……一体どういうつもり?

聞くか聞かないかで迷って、何も言えずにいると、

「これであいこでしょ」

彼の方から声をかけて来た。

「あいこって……」

「俺も歌ってんの見せたじゃん?同じ曲で」

ボズっと背もたれに、体を預ける櫻井くん。

「だからあいこ。もうあん時のこと、気にする必要なくない?」

「え……」

どういうこと?

瞬時には理解出来なくて、櫻井くんと目を合わせたまま固まる。