恋を知らない人魚姫。


ピッ、ピッ……と響く電子音。

カラオケに来たのだから、それは当たり前と言えば当たり前の行為。

だけど、

「歌うの……?」

あたしは恐る恐る声をかけた。

歌わせようとするのは予想出来ていたけど、櫻井くん自身が歌おうとするとは思ってもみてなくて。

だから、

「うん?」

当然のように頷いて、顔を上げた彼に驚いた。

「何、月城さんもやっぱり歌いたくなった?」

「違う!」

「ふーん……」

ニヤッと一瞬笑って、またリモコンへと目線を落とす櫻井くん。

その笑みは何なの!?
嫌な感じ!

ムッとするけど、表情は彼へ届かない。


変則的に響いていた電子音が、

ピピピピ……

突然連続して鳴って、あたしは顔を動かした。

目を向けた先はテレビ。
パッと切り替わる画面。

流れるイントロ、映し出された曲のタイトルに、心臓が止まりそうになった。

櫻井くんが選曲したそれは、あの時の……

あたしが教室で歌っていた曲。