恋を知らない人魚姫。


あたしの考えすぎ……?

そんな気もしないでもないけれど、
ただの偶然なのかもしれないけれど、

あたしは確かに、歌うことが好きかもしれなくて。
愛海のことで確かに、辛い気持ちを抱えてた……。


膝の上に置いた手を、自分自身でぎゅうっと握りしめる。

相手は愛海じゃない。櫻井くん。

あたしが気持ちを理解して欲しい人は、愛海ひとりなはずなのに……どうしてこんな気持ちになったりするの。

心の奥がとってもくすぐったくて、ムズムズする。
でも、何だか温かいような気もして。


わかってくれて嬉しい……なんて、どうかしてる。


きっと勘違い。
それに、あたしが嫌な思いをしているのは、櫻井くんのせいでもあるんだから。
自分の気持ちにそう言い聞かせようとして、動揺する気持ちを収めようとして、何度も手に力を入れる。

そうしていると、

向かい側に座る櫻井くんが動いた。

何をするのか気になって、今度は目が合わないように、そっと様子を確認する……と、

彼はもうひとつのリモコンを手に取って、何やら操作し始めた。