恋を知らない人魚姫。


あたしが白い目を向けていると、

「まぁ、とりあえず座ろうよ」

櫻井くんは気まずそうにもせず、あっさり離れてソファーに腰掛けた。

何となく腑に落ちない。

でも、結構長い距離をミュールで歩いて、正直疲れた。

悔しいような気もするけど、あたしは誘われるがままに、向かい側のソファーに座った。

櫻井くんがこんな感じだと、深刻に悩んでいる自分がバカバカしくなる。

いや、悩まなきゃならないようなことをしているのは、あたしだけなんだけど。

……っていうか、

「妹、いたんだ……」

何気なく会話の中に出て来た“妹”。
それはとても意外で、純粋に驚いた。

「あぁ、言ったことなかったっけ?小学生の妹がいんだけど」

「知らない。何年生?」

「今、小5」

「へぇ……じゃあ8つ違い?結構離れてるんだね」

櫻井くんの妹なんて、ましてやそんなに歳の離れた妹なんて、想像出来ない。

どんな子なんだろう……と、少し考えていると、

「会いたい?」

頬杖をついた目の前の櫻井くんが、フッと笑った。