恋を知らない人魚姫。


自分自身の行動に嫌気がさして。でもどうしようもなくて、それ以上何も言えない。

部屋の中は、テレビこそ付いているけれど、音声は出ていなくてとても静か。
隣の音なのか……誰かの歌声が微かに聞こえるだけ。

ほんの少し続いた沈黙を打ち破ったのは、櫻井くん。

一歩あたしに近付いて……頬に触れた。

そして、

「俺ん家の方が良かった?」

耳元で息を吹き掛けるように、呟いた。

「……は!?」

言葉の意味を理解するのに時間がかかって、ワンテンポ遅れて身を離す。

すると櫻井くんは笑いながら、

「出来れば俺もそうしたかったんだけど、今日は妹がいるんだよね」

申し訳ないとばかりに、手を合わせた。

「ほら俺、制服だからさ……ホテル行くわけにもいかないじゃん?」

「……」

あたしがそんなこと、一瞬たりとも考えていなかったの分かっているくせに、わざと言う神経がムカつく。

でも、わざわざ言い返すのも疲れてしまった。