「……月城さん?」
急に呼ばれた名前。
ハッと現実に引き戻されると、不思議そうな顔をして、櫻井くんがあたしを見ていた。
無邪気な表情。だけど、分かる。
その顔の裏で、本当はあたしの様子を笑ってる。
「ずいぶん……仲良いんだね」
――負けたくない。
そう思ったあたしは冷静を装って、ニコりと笑顔を浮かべて聞いた。すると、
「あっ、今日席替えだったんだけどね、隣の席になったんだ!」
顔を赤くして、少し焦った様子で答えたのは愛海。
「そうだったんだ……」
胸に抱いた嫌な予感。
それは勘違いだったと知って、ホッとする。
なのに、
「もしかして、俺と愛ちゃんが付き合ってるとか思った?」
「っ……!」
櫻井くんの一言が、あたしの心の海をまたもや掻き立てる。
でもそれは、あたしだけのことではなくて。
「なっ!たっくんてば、何言ってんのっ!?」
今までに見たことがないくらい、焦った愛海。
愛海もまた、櫻井くんの一言に動揺していて。
「愛ちゃん可愛いから、付き合ってもいいよ?」
「えっ?」



