ギッ……。
図書室の大きな扉が音を立てて開いて。
あたしと愛海は、反射的に目を奪われる。
「あっ!」
入って来た人を見て、嬉しそうな声を上げたのは愛海。
何で……。
何で来るの……?
その人は、絶対来ないと思っていた……彼。
あたしは驚きの声すら出ない。
だけど、
「たっくん!」
隣に座っていた愛海は立ち上がって、眩しいばかりの笑顔で彼に手を振った。
「あ!愛ちゃんもいたんだ」
そう言って、彼は真っ直ぐあたし達の方へと近付いて来る。
たっくん……?
愛ちゃん……?
状況が理解出来ず、ただ目を丸くする。
だって……。
まだ鮮明に思い出せる、今朝のふたりの様子。
あの時は確かに、苗字で呼び合っていた。
なのに……どうして?
「今日は海憂のこと手伝おうと思って。たっくんは返却?」
「いや、俺も愛ちゃんと同じかな」
目の前のふたりは、とても親しげにニックネームで呼び合っている。
どうして……いつの間に?
心の中がざわざわする。
“もしかして”と過るのは、嫌な予感。



