恋を知らない人魚姫。


ま、ど……?

あたしは頭を少し動かし、壁際を見る。

通路の先まで、ずっと並んでいる大きな窓は、全て綺麗に閉められている。

「……」

その光景をボーっと見つめていると、

「月城さんの方は?終わった?」

言いながら、櫻井くんはあたしの横を通り過ぎた。

「えっ、あっ、待って!あたしは――」

振り返って、慌てて追いかけるけど、間に合わない。


ピタッと足を止める、櫻井くん。

その先には、ゆらゆらと揺れるカーテン。

オレンジ色の陽の光を包み込むように、無地のカーテンが静かに膨らむ。

「まだ、だったんだ?」

「っ……」

顔だけで振り向いて、小さく笑われて。

あたしは返事もせずに、彼を追い越した。


何を勘違いして、とんでもないこと言ってんのっ!?

やっと自覚する、櫻井くんにキョトンとされた理由。


半分ほど開いた窓を閉めると、カーテンの膨らみは消えて。

あたしの手は、今度はそれを掴む。


“いきなり何処か行くから”なんて、それじゃまるで……。


「寂しかった?」