恋を知らない人魚姫。


“やっぱり来なきゃ良かった”って、またひとつ自分の行動を悔いる。

ホント、後悔することしかしていない。

そんな自分が情けなくて、じわじわと込み上げてくる涙。

『からかったら泣かれた』なんて思われたくなくて、顔を見られないよう精一杯、反対方向を向く。


すると、櫻井くんは何も言わず、

あたしの体に巻きつけていた腕を解いた。


「……」

突然軽くなった体に、
密着していた背中に通る空気。

少し慌てて振り返ると、真後ろに彼の姿はなくて。

あたしが進もうとしていた方向へと、歩いていた。


な、何……。
怒った……の?

彼が取った行動の意味が分からなくて、茫然と立ち尽くす。

何も言い返さなかったから、面白くない奴って思われたとか……?

それは一理あるかもしれない。

そんなことを考えている間にも、どんどん遠ざかっていく彼の足音。

……面白くないって、思われた方がいい。
これ以上からかわれて、面白がられるのは嫌だし。

そう心の中で呟いて、あたしも解放された体を動かす。

さっき閉めようとした窓へと、足を進めようとした。


……だけど。