恋を知らない人魚姫。


カタン、と鍵をかける音を響かせながら、あたしの手はそのまま動かない。

吸い込まれるみたいに、ただ空を見つめていると、

「大丈夫?」

背後から声をかけられた。

すぐそこまで近付いていたことに気付かなかったあたしは、ビクッと肩をすくませる。

振り返ってみると、櫻井くんは小さく笑っていて。

その態度にムッとしたあたしは、彼を軽く睨んで、再び足を動かした。


向かおうとしたのは、すぐ隣の窓の前。

だけど、数歩の距離しかないその場所に、あたしは辿り着くことが出来なかった。

それは……

あたしの腕を、櫻井くんが掴んで引き寄せて、

抱き止めたから。


「何するのっ!?」

背中から伝わってくる温もり。
窓の外へ目を向ければ、グラウンドが見えて。

こんなところ、知ってる人に見られたら困る!

あたしは手をバタバタと動かして、振り払おうとするけど、

「やだ」

櫻井くんは回した腕に力を入れ、押さえつける。