恋を知らない人魚姫。


「うん……嫌い」

あたしは零したみたいにひと言呟いて、

「この話、嫌い」

もう一度はっきり繰り返すと、開いた絵本を閉じて、櫻井くんに突き返した。


ページの大半を占めるのはイラストで、文字もひらがなばかりで子ども向け。

なのに、

切なすぎる物語。
残酷すぎる結末。

子どもに読み聞かせるべき物語は、もっと幸せなハッピーエンドの話じゃないの?……って言いたくなるのは、

まるで自分の未来を、示されているみたいだから。


愛海とは結ばれない。

どんなに想っても、どんなことをしても無駄なんだって。


「そろそろ鍵、閉めなきゃならないんじゃないの?」

古びた鍵が、絵本を受け取った櫻井くんの手から揺れてる。

夏休み中の図書室の開放時間は、17時まで。

最もらしいことを言うと、あたしは背を向け、彼から離れた。