恋を知らない人魚姫。


開いたページには、魔女と向き合う人魚姫の姿。

紫色の肌に尖った爪、黄色くつり上がった目と、とても恐ろしく描かれている魔女を、人魚姫は怯むことなく、強いまなざしで見つめている。

こんなに純粋な気持ちじゃない……けど、

この時の人魚姫の気持ちは、少し分かるような気がする。


あたしも、もし愛海に恋愛対象として見られる“男”になれるとしたら、声のひとつなんて喜んで失ってしまうかもしれない。

……なんて思いながら、次のページを開こうとしたその時、


ギィ。

こすれるような鈍い音が、部屋中に響いて。


「今日も来たんだ?」


入ってきた人は、あたしの顔を見るなり笑った。


「……」

メールを送ってきたのはそっちでしょ。

思いながらも口に出せず、ただ顔を逸らすのは……別に強要されたわけじゃないから。

メールに書いてあったのは、ここにいるっていう報告だけ。

つまり、嫌なら来なければ良かった。
選択権はあたしにあった。