恋を知らない人魚姫。


行き先を知られたら……どうなるのか。

想像して、胸がきゅっと締め付けられる思いになりながらも、あたしの足は止まらない。

真っ直ぐ、迷うことなく、進んでく。


やがて広がる見慣れた光景。

少し新鮮に感じるのは、いつも通っていた時間帯とは逆だから。

聞こえてくるのは、男子の大きな声。

何と言っているか判別は出来ないけど、それが野球部の声だということは分かる。


私服だからと、人目を避けて早足でくぐる校門。そのまま玄関へと向かう。

あたしが来た場所は、学校。


グラウンドこそ騒がしかったものの、夏休み中の校舎はとても静かで。
時間のせいか人の姿も見当たらず、少し怖いとさえ感じる。

それでも、自分の足音を聞きながら階段を登り、その場所へと辿り着いた。


力を込めてゆっくりと押す、大きな扉。

ふわっと鼻をくすぐるのは、古びた本の匂い。

そこは……図書室。