恋を知らない人魚姫。


「うん……」

屈託のない笑顔に頷きながら、あたしは何か心に引っ掛かる、そんな感覚を感じてた。

愛海の言う“これから”は、高校を卒業した先のこと。

ずっと一緒にいたくて、同じ学校へ進むと決めたあたしにとって、その約束は願ったもの、幸せそのもの。

なのに、親にまだ進学先をはっきりと伝えていない。

そろそろ話さなきゃって思うけど……言えずにいる。


「えっと。じゃあここは……」

再び問題集と睨めっこを始める愛海。

あたしはあたしで、手元に置いていた文庫本を開く。

ついこの前、借りたばかりの小説。

見れば、嫌でも思い出してしまう。
……ううん。見なくても思い浮かんでしまう。


ヴー、ヴー……。

隣から突如、小さな音が響いた。

それが何なのかすぐに分かったあたしは、持って来てたトートバッグに手を伸ばす。

取り出したのはケータイ。
新着メールを知らせる、青いランプが点灯してる。


……考えた矢先から。


ただの偶然だろうけど、あまりに上手すぎるタイミングで届いたメール。

確認したあたしは思わず、ふっと息を漏らして苦笑した。


ディスプレイに表示された内容は、

【今日もいるから】