思い返せば一度だけ、「あの時はごめんね」って、謝られた。
だけどそれっきり……話題に触れることもない。
愛海の口から出るのは勉強、進路のことばかり。
あたし達の希望進路は、看護系の専門学校で。
正直、普通の成績さえ保っていれば、問題なく進学出来る。
それなのに、愛海がこんなに頑張っているのは、それなりの成績じゃないと進学させないと、両親に言われてしまったかららしい。
何かを忘れようとするみたいに、ただひたすら勉強に打ち込む姿を見ていると、理由がそれだけじゃないのは分かる。
でも、何としてでも進学したいっていうのも、本当の気持ち。
だって、看護師になることが、愛海の夢だから……。
「もぉー。いつも一緒にいるのに、どうしてこんなに差があるの?」
一度手から離したペンを拾って、愛海は頬杖をつく。
「でも、海憂が友達で良かった。頭良い友達がいると、すっごい心強いもん」
ムッとしていた表情が、パッと笑顔に変わる。
「これからも、分からないこととかあったら教えてね!」



