「何?」

言葉の続きが気になる。

だけど愛海は、あたしの顔をじっと見て、

「やっぱり秘密!」

と、はにかんだ。


「え……どうして?」

「秘密なものは秘密なの!恥ずかしいから、この話は終わりねっ!」

そう言うと、愛海は赤くしたままの顔をお弁当箱に向け、

「ほら、早く食べないと休憩終わっちゃうよ!」

誤魔化すように急かした。

「……」

心に冷たい風が吹く。

とても小さな出来事。
だけど、泣き出してしまいたいくらいに、ショックを受けてしまっているのは、

“秘密”という、たった一言の言葉のせい。


秘密なんて……今まで一度もなかったのに。


キュッと握り拳をつくる。


愛海の恋に、触れちゃいけない。
関わっちゃいけない。

そう思っていたけど、

やっぱり憎い。
やっぱり嫌い。

あたしから愛海を奪っていく、櫻井拓也が――。