「は?」
振り返って、何言ってんのと言わんばかりの顔で、あたしを見下ろす櫻井くん。
当然と言えば、当然。
震えるあたしに気付いて、彼は途中で行為を止めたわけで。
つまりそれは、他でもないあたしの為ということになる。
でも、誰がやめてって言った?
そんな気遣い……必要ない。
「怖いとか女の子らしいこと、あたしもまだ思えるんだ」
自分の性別さえ、見失いかけていたけど。ひとつ見付かったそれらしい感情に、ホッとしてる。
「なら、尚更。もっと……教えてよ」
あたしにもっと、“女の子らしい”感情を教えて。
そしたら少し、変われるかも。
愛海を想うこの気持ちを、どうにか出来るのかもしれない。
最も、
「広い世界見ないとダメって言ったの、櫻井くんだよ」
掴んだシャツを、自分の方へと引き寄せる。
「嫌って声に出して、抵抗した方がいいって言うんなら……そうするよ?」
言葉もなく、唖然としていた櫻井くんに、あたしは挑発的に微笑んだ。
こうすれば、彼は乗ってくるって思ったから。



