恋を知らない人魚姫。


櫻井くんの手は、あたしの胸元へ。

ワンピースのボタンを、上から順に外していく。

やけに手慣れた手つき。
櫻井くんは初めてじゃないんだろうか。

……なんて、どうでもいいことのはずなのに、どうしてなのか胸がチクンと痛んだ気がした。


恥ずかしくて、くすぐったくて、切なくて、苦しい。

自分でも今感じている気持ちが何なのか分からないくらい、ぐちゃぐちゃになってる。

それでも、待ったなしに進んでいく行動。


開いた胸元の隙間から、櫻井くんの手が入って来て……。

あたしは目を閉じたまま、全てを受け入れる覚悟をした。


だけど彼の手が、あたしの胸に触れたのは一瞬。

太ももに触れていた手も、のしかかっていた体の重みも、次の瞬間には離れて行った。


突然の開放感に驚いて、目を開く。

すると目の前には両手を立て、あたしを真っ直ぐ見下ろす彼がいた。


「何で嫌がんないんだよ」

「何で……って……」

「手、ずっと震えてんじゃん」