恋を知らない人魚姫。


初めて入った部屋で、しかも目を閉じていて、どこに何があるかなんて分からない。

それでも、櫻井くんがあたしを連れて行こうとしている場所だけは……分かる。


男を教えてと言ったのはあたし。

キスだって、そのつもりでした。

だから――。


ドサッと音を立てて、後ろに倒れた体。

あたしはされるがままに、ベッドへ押し倒された。


やっと離された唇に目を開けると、覆いかぶさる櫻井くんの姿。

目を合わせたのはほんの一瞬で、彼はすぐあたしの首元に顔を落とす。

「っ……」

普段誰にも触れられない場所。
そこに唇が当たるとくすぐったくて、目と口をギュッと閉じる。

そして、首筋だけじゃない。
右足にも、慣れない感覚。

ふくらはぎから太ももへ、なぞるように伸びる手。

寒くなんかないはずなのに、むしろ櫻井くんの体温で暑くすら感じるのに、鳥肌が立つ。


このまま進めば戻れない。

でも言い出したのは、決めたのは、あたし。


押さえつけられるように、握られていた右手首。

その力が弱まって、離されるけど……あたしは自分の手を動かさない。