恋を知らない人魚姫。


男を知らないから……?
だから、あたしは愛海にこだわる?

……違う、そんなんじゃない。

「あたしは愛海が女だから好きになったわけじゃないっ!」

愛海だから好きになった。

そこだけは勘違いしてほしくなくて、思わず声を張り上げる。

すると、クスッと笑うような息が触れて……、

「うん、知ってる」

櫻井くんの唇は、声とともにあたしの耳から離れた。


何よ……それ。

体中に入っていた力が、途端に抜ける。

知ってるなら何でそういうこと言うの?
何がしたいの?

櫻井くんの発言や、行動の意味が分からない。

いや、ただ単にあたしをからかって、反応を見て楽しんでいるだけ……なのかもしれないけど、


“知ってる”


彼のたった一言が、胸をぎゅうっと締め付ける。


苦しいのは、きつく抱きしめられているせい。

じゃあどうして、また泣きそうになってるの……?