「大丈夫だよ。言わないから」

耳にフッと吐息が吹きかかって、

「っ!!」

ゾクッとしたあたしは、櫻井くんから身を離した。


「どうしたの?」

彼の後ろから愛海の声が聞こえる。

「……ほら、取れた」

櫻井くんは手にした糸屑を見せて、にっこりと笑った。




「ねぇ、どこが好きなの?」

昼休憩の屋上。

あたしの質問を聞いた愛海は、口へ運ぼうとしていたタコ型ウインナーを、ポロッと落とした。

「す!好きって……何がっ!?」

顔を赤くして、声に力が入っている愛海。
「何が」と聞きながら、分かっているのは明らか。

「……櫻井くんのこと」

あたしが名前を出すと、一層顔を真っ赤に染めて。

「どこがって……カッコイイし、優しいし……」

「優しい?」

「うんっ!すごく優しいよ!あのねっ……」

何かを言おうとしながら、ハッと我に返ったように愛海は口を閉じた。