恋を知らない人魚姫。




「男の部屋なんか来て、どうなるか分かってんの?」

面白がるような声と……パタンとドアが閉まる音。

通された部屋には、見慣れないベッドや机。
黒や茶色など、重い感じの色でまとめられたその場所はシンプルで、思ったよりも大人な印象。


ここは、櫻井くんの家の部屋。


「会いに来てって呼んだのは、あなたでしょ」

「そうだけど。部屋に来るとは予想外」

振り返ると、クスクスと笑う櫻井くん。

その姿にイラっとするけど、こうして笑われるのは分かってた。

何故なら、部屋まで行きたいと言い出したのは……あたし。


元々櫻井くんが指定してきた場所は、うちの近く。
でもそれをあたしが断った。

誰かに見られたら困るから……とか、そんな理由もあったけど、

“会いに来て”って言ってきたくせに、あたしの家の近くにするとか、何だか心配されているみたいで嫌だった。

余計な“優しさ”なんていらない。
櫻井くんは最低最悪な人、なんだから。

それに――。