恋を知らない人魚姫。


「ごめん。愛海がそんな風に思ってくれてるの、嬉しくて」

あたしが選んで口にしたのは、“友達”として正しい言葉。

本当は嬉しくなんかなくて。
愛海の言葉はただ、残酷な現実を突きつけただけ。

「何だぁ……びっくりした」

微笑んで、ストンと肩を落とす。

愛海のその仕草がまた、モラルという名のナイフであたしの心を切りつける。

この気持ちはおかしいって、
あたしは普通じゃないって。

「っていうか、こんなこと話してないで、早く帰んなきゃだよね」

「ごめん」と続けて謝って、握っていた手を離す愛海。

温もりが遠ざかった後、手のひらに触れた空気は冷たくて、何だかホッとした。

あんなに会いたくて、あんなに一緒に居たかったはずなのに……今は怖い。

愛海の側にこれ以上居たら、心が壊れてしまいそうで怖かった。

だから、

「愛海はこれから……どうするの?」

何てことのない普通の会話さえも、探り探り。