恋を知らない人魚姫。


そんな状況だけで、あたしの胸は押しつぶされそうなくらい苦しくなる……のに、

「海憂が男の子だったら良かったのに」

「え……」

「海憂が男の子だったら、あたし間違いなく好きになってるもん」

少し照れて言う愛海の言葉が、呼吸を出来なくさせる。

「海憂もそうでしょ?あたしのこと、好きになってくれるでしょ?」


……冗談。

愛海のそれは、冗談だって分かっているのに、返せない。


だってあたしは、男じゃなくても愛海が好きで――。


「えっ、海憂っ!?」

急に変わった、あたしを呼ぶ声のトーン。

一歩踏み込んで来て、体の距離が近くなる。

「何で……」

覗き込んで、心配そうな声をかけられる理由。

それは、あたしが……泣きそうな顔をしてるから。


男だったら、なんて言わないで。

ずっと友達でいられる女で良いって思ったのに、後悔してしまいそうになる。


あたしの手を握る愛海の手。

本当はこの手を握り返して、抱きしめたい。

他の誰にも奪われないように、愛海をひとりじめしてしまいたい。


でも……そんなことを思うのは、おかしい。