恋を知らない人魚姫。




「あ、どうだった? おばさん何て?」

電話を切って戻ると、愛海がすぐに声をかけて来た。

さっきのことがあって、不審がられていないか不安だったけど、特に変わった様子のない態度にホッとする。

でも、だからこそ、

「えっと……ごめん」

「やっぱり帰っておいでって?」

「……うん」

嘘をつくのが、苦しい。


「海憂ってば、そんな顔しないでよ。あたしもう大丈夫だから」

クスッと、愛海は小さく笑う。
電話をしている間、ひとりきりにしてしまったわけだけど、その目元はもう濡れてはいなくて、“大丈夫”という言葉は、あながち嘘ではないみたい。

それでも、心の中が晴れるはずもなく、あたしは目線を落とす。

すると、キィ……と、ブランコの鎖が軋む音がして、

温かい手が、あたしの片手に触れた。

目の前には、優しく微笑んだ愛海。

「落ち着けたのは、海憂のおかげだよ。来てくれて本当に嬉しかった」


慰めに来たのはあたし……だったはずなのに、いつの間にか逆みたいになってる。