もうダメだと思った。

だけど、

「昨日、図書室で本借りてさ。そん時にちょっと話したんだ」

え……?

彼の口から出た言葉。
それは予想していたものとは違って、あたしは目を開いた。

「ね、月城さん」

「あ……うん」

にっこりと笑う櫻井くん。

その笑顔は信用ならないけど、素直に頷いた。

すると、

「そうだったんだー」

疑うことを知らず、笑顔を見せる愛海。

図書室で本を借りた時に話した……それは、嘘じゃない。
嘘じゃない……けど。

チクリと痛む良心。

耐え切れず、愛海から目を逸らすと、

「月城さん、肩にゴミ付いてるよ」

櫻井くんはあたしの方へと近付いて来た。


な、何……?

目の前に立った彼に、思わず後ずさる。

だけど、

「っ――!?」

櫻井くんはあたしの肩に手を乗せて、そのまま体を引き寄せた。

そして、


「“付き合ってる”って、言うと思った?」


驚くあたしの耳元で、彼は囁く。