恋を知らない人魚姫。


『証拠ならあるよ』

「え?」

『今こうして電話してんじゃん。今日だけじゃない、今までの履歴全部見せたら……どっちの言うこと信じると思う?』

試すような櫻井くんの声。

全身の血の気が、サーっと引いていく。

「ま……待ってよ!そんなの卑怯っ!」

『卑怯かな?俺は何も嘘ついたりしようとはしてないけど』

「っ……!」

彼の言葉が、胸の痛いところを刺す。

確かに櫻井くんは、間違ったことをひとつも言ったりはしてなくて。

愛海に嘘をつこうとしているのは……あたしの方。


『……どうする?月城さん』

櫻井くんがもう一度、最後とばかりに問いかける。

うるさい、黙ってよ。
あなたのいいなりなんかになりたくない。


……でも。


結局あたしは櫻井くんに勝てなくて。

結局あたしが……一番卑怯。