電話に出るのが怖くて、あたしはケータイから顔を背けた。
無視してしまおうとした。

だけど、

なかなか途切れない着信。

メールで済ませることの多い愛海が、こんなにも呼び出しを続けるなんて珍しくて、恐る恐るケータイに手を伸ばす。

まだ……切れない。

妙な胸騒ぎを感じながら、あたしは震える手で通話ボタンを押した。


「もしもし……もしもし、愛海？」

『海憂っ……』

受け入れたくない結末を覚悟して、呼吸を整えて電話に出たつもり。

でも、愛海の声を聞いた瞬間、息が止まりそうになった。


口から飛び出したみたいに呼んだ、あたしの名前。

続けて電話口から聞こえてきたのは、しゃくりあげるような嗚咽。

そして、


『だめっ……だった、ふられちゃったぁっ……』


愛海が口にしたのは、予想していたのとは逆のこと。