「中途半端に？」

「よ、余計なことするからっ……」

あたしは慌てて返事した。

聞き返されたことに焦ったわけじゃなく、自分が今思ったこと、口に出そうとしたことに驚いて。

「へぇー。余計なことなのに、感謝してくれるんだ？」

さっきまで丸くしていた目を細め、クスクスと笑う櫻井くん。

コロコロと変わる表情、態度。
何が本心なのか、未だに区別出来ない。

だから、時折あたしに親切にしてくれたのだって、裏で何か考えてのことかもしれない。

実際、ずっとそう疑ってきた……のに。


“優しい”と、言葉を選ぼうとしたなんてどうかしてる。

『中途半端に優しくするから』なんて、適した言葉じゃないのに。

……それでも。


「最後くらいは、ちゃんとしておきたいじゃない？」

あたしは櫻井くんに負けじと、上辺だけの笑顔を作る。


それでも今あたしは、彼のことを悪い人じゃないのかも……って、思ってる。

世界で一番嫌いな人は、相変わらず彼だけど。



――終わらせるなら、きっと今。