愛海をひとりレジへと向かわせたのは、動揺する彼女を落ち着かせてあげたかったから。

でも、全てが全て愛海の為というわけじゃない。

あたしは彼に言わなきゃならないことがあって、わざとふたりになるタイミングを作った。

それは……。


「まさか月城さんが認めるとは思わなかったな。どうかした?」

先に声をかけられたと思ったら、同時に軽くなった手元。

顔を上げれば、櫻井くんは隣に立っていて、拾ったストラップを元の場所へと戻してくれていた。

「あっ、あたしが……」

やるとばかりに手を伸ばすけど、

「いいよ。それより俺とふたりになりたかった理由、教えてよ」

ニッと面白がるような笑顔を浮かべて、あたしの手からストラップを遠ざける。

「……」

そんな言い方ばかりするから、気付けない。

先に立つのはいつも不快な気持ちで、だから気付けなくて……言えない。

本当は今だって、櫻井くんの態度にちょっとムッとしてる。

別に片づけて欲しいって頼んだわけじゃないし、櫻井くんが勝手にやってるだけ。

もしかしたら、言う必要なんてない言葉かもしれない。

でも……

……でも。


「……ありがと」