恋を知らない人魚姫。


どうしよう……苦しい。
愛海が櫻井くんのものになってしまうなんて嫌。

やっぱり嫌……嫌……嫌だっ!

「愛海っ、もう少し――」

“後にしたら”なんて、あたしはこの期に及んで言ってしまいそうになった。

でも、直前で止まることが出来たのは、


「海憂は本当にたっくんのこと、好きじゃないんだよね?」


あたしよりも先に、愛海が言ったから。


あたしを見る心配そうな目。

問いかけるようなそれは、自分のことじゃなく、あたしを心配してくれている眼差し。

あたし……何してるんだろう。

ブクブクと沸騰したお湯を火から離したときみたいに、静まる“嫌だ”という気持ち。

同時に込み上げて来たのは、どうしようもなく切ない気持ちで……泣きたくなった。


あたし……。

あたしは……、


「あたしが好きなのは愛海だよ」