恋を知らない人魚姫。


「よりによって海憂に嫉妬したりとか、自分でもおかしいって思ってる。でも、たまにどうしようもなくなる時があって……」

思いつめた表情。
それが、彼への気持ちの大きさを今一度あたしに知らしめる。

「でもねっ、海憂のことは本当に親友で大好きなの! だから……ストラップ外すとか、寂しいこと言わないで」

すがるような必死な目で見上げる愛海は、あたしの手をギュッと掴んだ。


愛海はあたしのことを“親友”として、ちゃんと大事に思ってくれてる。

なのに、あたしは何をしているんだろう。
何で“親友”じゃダメなんだろう……。

情けない気持ちで、胸が押しつぶされそうになる。

それに、愛海のためを思うように言いながら、ストラップを外したかったのは、きっと本当はあたしの方。

だってあれは、櫻井くんが買ってくれたものだから。


自分の気持ち、行動。

愛海に対してどんどん湧き出てくる……罪悪感。


目の前で、とても不安そうにあたしを見つめる愛海に、

「あたしこそそんなつもりじゃなかったの……。ごめん」

掴まれた手を、ギュッと握り返して謝った。