櫻井くんに追いついた愛海は、引きとめるみたいに今度は彼の腕を掴んで笑いかけた。
その光景にチクンと小さく痛む胸。
あぁ……そっか。あたしと愛海を近づけることで、逆にあたしを傷つけようとしてるんだ。
なんだ、そういうことかと息を吐き、あたしもまた歩き出す。
こんな仕返しをしてくるのなら、罪悪感を感じる必要はもうない。
むしろ、やっぱり最低って、また彼を憎み直してもいいくらい……なのに。
どうしてまだ、こんな気持ちのままなの……?
スッキリしない。
心の中をかき回されてる感じ。
モヤモヤする……って、きっとこういうことで。
“どうして”なんて考えながら、原因はハッキリしてる。
頭の中に浮かんで消えない……彼の顔。
それは、「良かったね」という言葉と一緒に向けられた、笑顔。
“あたしを傷つけたいだけ”そう思いたいのに、その表情が邪魔をする。
何であんなに優しく微笑んだりしたの?
あれじゃ“良かったね”って、本当に思ってるみたい……。



