「わーっ!水族館だ!」

電車を降りて、ほんの少し歩いて。
目的地にたどり着くなり、愛海が声を上げた。

「海憂は前に家族と来たんだよね?」

くるっと振り返って、満面の笑顔で声をかけてきた愛海。

「えっ、うん」

慌てて返事しながら、その発言にドキッとする。

だってそれは……。

思ったままに視線を動かすと、愛海の隣に立った彼と目が合って、息が止まりそうになった。

この後起こることを予感して、血の気がサッと引いていく、いつもの感じ。


……だけど。


「暑いから早く中入ろ」

櫻井くんはあたしから視線をすぐに離して、愛海に笑いかけた。

また……だ。

思っていたのとは違う、彼の態度。
時が止まったみたいに、体がピタッと固まる。

「海憂?ボーっとしてないで行くよ?」

「えっ、あっ、うん……」

愛海に再び声をかけられて、あたしはハッとして歩き出した。