恋を知らない人魚姫。


良かった……。

安心して胸を撫で下ろす。
だけど、その後すぐに感じた違和感。

いつもなら、あたしの嫌がることを敢えてやってくる人なのに、今もさっきも何も仕掛けて来なかった。

一度であれば、気付かなかったんだと思うことも出来る。でも、

櫻井くんが二度も見逃したりする……?

何か良からぬことでも考えているんじゃないか。
そう思ったあたしは彼を見るけど、愛海と話しながら歩いているだけで、特別変わった動きはない。

ねぇ、一体何を考えてるの……。

全くと言っていいほど心の内が読めなくて、あたしは視線を落とした。

すると、

手の中でピカピカと光る青いランプ。
見ればそれは今取りだしたケータイで、メールが届いていることを伝えるもの。

何?誰から?

あたしは歩きながらケータイを開く……けど、ボタンをふたつほど操作して、出て来た名前に足を止めてしまいそうになった。


届いていたメールは一通。

差出人は……櫻井くん。